「あたらしい決済」は、もう始まっている
イベント概要
2026年4月25日(土)、Tokyo Bitcoin Base(四谷本塩町)が開業1周年を迎え、記念イベント『この碑なんの碑サトシの碑』が盛大に開催されました。
そちらにて当社が企画した「“あたらしい決済” UseBitcoin.jp presents — Lightning Network決済売上1億円突破記念!裏側大公開!」トークイベントを開催しました。
本イベントは、ビットコインのLightning Network決済による売上1億円突破を記念し、その裏側にある事業づくり、技術実装、メディア視点、ステーブルコインとの接点、そして新しい決済インフラの可能性を掘り下げる場として行われました。
登壇したのは、UseBitcoinを運営する株式会社カシェイ創業者の岡田、UseBitcoin開発エンジニアのmotiと名澤、幻冬舎 あたらしい経済の記者・髙橋様、日本ビットコイン産業株式会社のエンジニア・UK、JPYC株式会社代表取締役の岡部様、そして日本ビットコイン産業株式会社ファウンダーの加藤規新です。
イベント全体を通じて問われていたのは、ビットコインやJPYCステーブルコインといった「あたらしい決済」が、日常インフラとして実際に“使われるお金”になり得るのかということでした。
プロローグ
1億円という数字が、議論を現実に変える
冒頭で共有されたのは、UseBitcoinがLightning Network決済を通じて売上1億円を突破したというマイルストーンでした。
ビットコイン決済の事業利用は、これまで「可能性」として語られることが多くありました。しかし、どれだけ思想が強くても、実際に使われなければ社会実装とは言えません。
UseBitcoinの1億円突破は、日本でも「ビットコインで支払う人がいる」「ライトニング決済で商品を買う人がいる」「その体験が積み上がっている」という事実を示すものです。
1億円はゴールではありません。
新しい決済体験が、現実に動き始めたことを示す象徴的な数字です。
第1部:UseBitcoinの裏側 ビジネスサイド編
ビットコイン決済を“事業”にする

第1部では、株式会社カシェイ代表取締役および日本ビットコイン産業株式会社取締役であり、UseBitcoinの立ち上げを主導した岡田が、UseBitcoinのビジネスサイドについて語りました。
その中心にあったのは、ビットコイン決済を単なる技術的実験ではなく、一つの事業としてどう成立させるかという現実的な視点です。 Lightning Networkを利用してビットコイン決済の仕組みを構築すること自体は、技術的には十分可能です。しかし、仕組みがあることと、それが継続的に利用されるサービスになることは全く別物です。
岡田の話から見えてきたのは、ビットコイン決済の普及には、技術だけでなく、「使われる理由」と「裏側のオペレーション」を設計することが欠かせないということでした。
また岡田は、ビットコイン決済が広がる構造的な可能性についても触れました。
ビットコインは、誰もが接続できる「オープンな規格」です。AmazonとGoogleが競争しながらもインターネットというネットワークの上でその価値を広げてきたように、世界中のビットコイン関連企業も、ビットコインという同じネットワークの価値を広げています。
通常、異なる決済サービス同士を相互利用できるようにするには、企業間の提携や個別のシステム連携が必要です。しかし、ビットコインというオープンな規格の上では、対応するウォレットやサービスであれば、個別に提携していなくても同じネットワーク上で価値を送受信できます。この相互運用性に、既存の決済インフラとは異なるビットコイン決済ならではの可能性があります。
UseBitcoinが達成した累計売上1億円という数字は、単にビットコインで買えるものを並べた結果ではありません。 ビットコインを単なる保有資産ではなく、実際に使える決済手段へと近づけていくために、商品設計、仕入れ、在庫管理、決済実務、購入体験、ユーザーサポートに至るまで、一つひとつ事業として積み上げてきた結果だと言えます。
技術をいかに事業へと落とし込み、日常で使われるサービスへ育てていくか。地道な実践の積み重ねが、ビットコインをあたらしい決済の選択肢として広げていくうえで欠かせないことを示すものでした。
第2部:UseBitcoinの裏側 テックサイド編
UseBitcoinを支える技術

第2部では、2人のUseBitcoin開発エンジニアが登壇しました。最初に、motiがUseBitcoinの技術面について語りました。
このLTのテーマは、「普通のWebに、何を足すとBitcoin決済サイトになるのか」。技術スタック、技術選定の理由、実装・運用におけるリアルな経験が共有されました。
特に強調されたのは、サービス構築において「普通のWeb技術にBitcoin決済レイヤーを足しただけ」であるという点です。つまり、大半はWebエンジニアの既存スキルにビットコインの知識を加えることで実現できる、という整理です。
motiのパートは、ビットコイン決済Webサービスを実現するための手軽な技術構成を示すとともに、実際に運用してきたからこそ見えてきたハマりどころを共有する、開発者向けの実践的なセッションでした。
プライバシーファーストなギフトカード販売サイトの作り方

続いて、開発エンジニアの名澤が、UseBitcoinの設計思想と決済プロトコルの動向について語りました。
UseBitcoinが重視しているのは、「プライバシーファースト」の設計です。氏名、メールアドレス、IPアドレス、Cookieなど、ユーザーを追跡・特定し得る情報を取得せずにサービスを運営しています。
その注文管理を支えているのが、ユニークな文字列であるOrderIDです。ユーザー情報を持たなくても、OrderIDをLightning NetworkのInvoiceに紐づけることで、トラブル時の注文復旧が可能になります。
また、L402、x402、MPPといった決済プロトコルにも触れられました。AIエージェントの台頭により、HTTP 402を活用したマイクロペイメントが再び注目されており、Lightning Networkの支払い証明は、API課金やAI同士の自律的な決済にも応用が期待されています。
名澤のセッションは、UseBitcoinがプライバシーを守るECであると同時に、ビットコイン決済インフラがAI時代の新しい決済の実験場になりえることを示すものでした。
第3部:メディアから見たUseBitcoin
日本におけるライトニング決済の現在地と、2028年への展望

第3部では、幻冬舎 あたらしい経済 記者・編集者である髙橋様が、メディアの視点からUseBitcoinの1億円突破を読み解きました。
UseBitcoinは、約1年半で累計決済額1億円に到達しました。髙橋様は、税制面での負担が大きい日本でも「Lightning Networkで買い物をする人が確実にいる」ことを示した点に、この実績の本質的な価値があると指摘しました。
今後の追い風として、暗号資産税制の見直しやBTC-ETFによる保有層の拡大にも触れられました。税制負担が下がり、ビットコインを保有する人が増えれば、決済需要もさらに広がる可能性があります。
また、高速・低コストなLightning Networkは、AI時代の決済インフラとしても大きな可能性を持っていると指摘しました。
髙橋様は1億円の意味を「需要があった」からだけではなく、「正しく設計すれば、ビットコインは使われる」ことの証明だとも総括しています。 髙橋様のセッションは、UseBitcoinの1億円突破を単なる一社の成果としてではなく、日本におけるライトニング決済の現在地を示す実例として位置づけるものでした。そしてその先には、税制改正、保有層の拡大、AIエージェントの普及によって、2028年に向けてライトニング決済がさらに広がる未来が見えてきます。
第4部:「ニューヨークのタクシーも、ふるさとのお年玉も、このお金で」
Lightning Networkがひらく、「共通のお金」の世界

第4部では、JBIのソフトウェアエンジニアであるUKが登壇し、Lightning Networkの可能性について語りました。
UKは、Lightning Networkの特徴として、速い送金速度、安い手数料、高いプライバシーを挙げました。ビットコインはグローバルで中立的なお金ですが、日常決済では送金時間や手数料が課題になることがあります。Lightning Networkはその課題を補い、少額決済や日常的な支払いを現実的にする技術です。
印象的だったのは、UKがLightning Networkを単なる高速決済技術ではなく、世界中のサービスをつなぐ共通言語として捉えていた点です。
「ニューヨークのタクシーも、ふるさとのお年玉も、このお金で」
この言葉には、国や地域、サービスを越えて、誰もが同じネットワーク上で価値を送受信できる世界観が込められています。
従来の決済サービスは、多くの場合、それぞれのアプリや国の中に閉じています。一方で、Lightning Networkが共通プロトコルとして機能すれば、米国のCash Appと日本のUseBitcoinのように、異なるサービス間でもシームレスな送受金が可能になります。
これは、メールがGmailや独自ドメインを越えて送受信できることに似ています。Lightning Network対応サービス同士であれば、ユーザーは特定のアプリ内に閉じ込められず、自分のウォレットから世界中のサービスへ価値を送ることができます。
UseBitcoinにとっても、この相互運用性は大きな意味を持ちます。専用残高を持たなくても、普段使っているLightning Networkウォレットから支払える。海外のLightning Networkユーザーも、日本のサービスへ自然にアクセスできる。そこに、ビットコイン決済ならではの広がりがあります。
UKのセッションは、Lightning Networkを「ビットコインを速く送る技術」としてではなく、個人、事業者、国境、サービスの壁を越えて価値を流すインフラとして捉え直すものでした。
UseBitcoinの1億円突破は、単なる一サービスの成果ではありません。それは、誰もが同じお金のネットワークに参加できる未来への入口でもあります。
第5部:なぜ社会にはJPYCが必要なのか?
JPYCがひらく、ブロックチェーンが使われる社会

第5部では、JPYC株式会社代表取締役の岡部典孝様が登壇し、「ビットコインとJPYC:なぜ社会にはJPYCが必要なのか?」をテーマにLTを行いました。
岡部様は、暗号資産決済を社会に広げるうえで、税制・事務負担と心理的負担が大きな壁になると指摘しました。ビットコインで支払う場合、決済時に時価評価が必要となり、利確とみなされることで税計算が発生します。また、将来的な値上がりを期待して「使うより持っておきたい」という心理も働きます。
そこで提示されたのが、日本円ステーブルコインJPYCの役割です。JPYCは日本円と1:1で価値が連動する電子決済手段であり、ブロックチェーン上で直接送金・決済できる利便性を持ちながら、価格変動や時価評価の負担を抑えられます。
岡部様は、JPYCをビットコインと対立するものではなく、ビットコインがより広く使われる社会に向けた橋渡しとして位置づけました。JPYCを通じてセルフカストディや国内での送金・決済に慣れることが、将来的に暗号資産がグローバルに流通する土台になるという見立てです。
JPYCは、ビットコインの思想と円建て決済の実務をつなぐ存在です。その普及は、結果としてビットコインの普及にもつながっていく。そんなメッセージが印象に残るセッションでした。
第6部:特別対談 JPYC vs ビットコイン
ビットコイン、JPYC、プライバシー、そして「あたらしい決済」の未来

第6部では、JPYC株式会社代表取締役の岡部典孝様と、日本ビットコイン産業株式会社取締役の加藤規新による特別対談が行われました。
テーマは、ビットコイン/JPYCとプライバシー、メタプラネット社とJPYC社の提携、金融庁との向き合い方、そして「あたらしい決済」を広めるために必要なことです。両者の立場の違いがはっきり表れながらも、非常に刺激的な議論となりました。
まず議論されたのは、決済におけるプライバシーです。加藤は、JPYCのようなパブリックチェーン上の決済では、ウォレット残高や売上情報が見えてしまうリスクがあると指摘しました。一方で、ビットコインのライトニング決済は、取引の詳細が外部に見えにくく、高いプライバシーを持つ点を強調しました。
これに対して岡部様は、プライバシーの課題を認めつつも、JPYCには中間業者による検閲を回避し、利用者の自由を守る役割があると説明しました。金融庁のライセンスを持つ立場上、JPYC自体をプライバシーコインのように設計することは難しいものの、プライバシーを重視する人々がその上に新しい仕組みを構築するための「レゴブロック」になり得るという見方を示しました。
続いて、メタプラネットとJPYCの提携についても議論が交わされました。岡部様は、この提携をビットコイン経済圏とJPYC経済圏をつなぐものと位置づけました。ビットコインを売却せず、担保にしてJPYCを借りることで、保有を続けながら日常の支払いに使える可能性があるという考えです。
一方で加藤は、ビットコイン担保ローンにはレバレッジとしての危うさがあると警鐘を鳴らしました。便利な仕組みに見える一方で、借り入れが過度になれば、利用者が大きなリスクを抱える可能性があります。この点では、「ビットコインを売却せずに資金を調達できる可能性」と「価格下落時の強制売却・連鎖的な売り圧・税務上のリスク」をどう整理するかが、大きな論点として浮かび上がりました。
金融庁との向き合い方について、岡部様は、規制当局と対話するうえでは社会的な意義や現実的な貢献を示すことが重要だと語りました。特にJPYCでは、裏付け資産として日本国債を活用する方針が、制度との接続において大きな意味を持ったと説明しました。
また、今ビットコイン決済を広めるなら、多くの人に実際の決済体験をしてもらい、当局が無視できないユースケースを積み上げることが重要だという話もありました。制度を動かすには、思想だけではなく、実際に使われている事例が必要です。
最後に議論は、「あたらしい決済」をどう広げるかへと移りました。岡部様は、AIの普及によって金融機関のセキュリティコストや不正対策の負担が増し、既存の金融システムが大きく再編される可能性に触れました。その先には、AI同士が決済し合う世界があり、ビットコインやステーブルコインが重要な役割を担うという展望が示されました。
加藤は、新しい決済を広げるには、まず多くの人に試してもらうことが重要だと語りました。JPYCのようなステーブルコインが一般に受け入れられやすいのであれば、それを入り口としてビットコインやライトニング決済につなげていく。そうした相互乗り入れによって、ネットワーク効果を広げていくことが必要です。
この対談は、ビットコインとJPYCの違いを明確にしながらも、両者が補完し合う可能性を浮かび上がらせるものでした。自由と規制、プライバシーと透明性、価値保存と日常決済。そのあいだにある緊張関係こそが、「あたらしい決済」を考えるうえで最も重要な論点なのだと感じさせるセッションでした。
おわりに
1億円は、次のステップへの入口である

今回のイベントは、UseBitcoinの売上1億円突破を祝う場でありながら、日本におけるあたらしい決済の現在地を確認する場でもありました。
ビットコイン決済は、もう単なる思想ではありません。Lightning Networkは、もう単なる技術デモではありません。日本円ステーブルコインも、遠い未来の構想ではなく、現実のサービスや制度と接続され始めています。
もちろん、課題はまだ多くあります。UX、事業者導入、会計・税務、プライバシー、規制、そして一般の人に伝わる言葉。これらを一つひとつ乗り越える必要があります。
それでも、今回のイベントで明らかになったのは、すでに実践が始まっているということです。
ビットコインで支払う人がいる。
ライトニングで購入する体験がある。
日本円ステーブルコインと日常決済の接点が生まれつつある。
事業者、開発者、メディア関係者、各々のプレイヤーが同じ場で議論している。
1億円は、ゴールではありません。
ここからが本番です。
「あたらしい決済」は、未来の話ではなく、すでに始まっているのです。

